Lesson1-1 リンパ―主な成分、血液との違い

リンパは血液から生まれる

第1章ではリンパについて学んでいきます。しかし、リンパについて詳しく学ぶためには、まずはその大元となるものについて知らなければなりません。

リンパは血液から生じます。

血液はわたしたちの体を構成する大事な要素の1つです。骨髄から産生され、心臓から送り出され、血管を通って体の中の様々な部分をめぐり栄養素や酸素を渡します。また、血液中の成分が凝固することで、傷口を塞いで細菌の侵入を防ぐなどの役割も持っています。

人体において水が占める割合はおよそ60%だといわれていますが、血液はおよそ体重の1/137~8%ほどになります。この割合は男女でもちょっとした違いがあって、男性8%、女性7%ほどと、男性の方がやや多めであるとされています。

血液の成分については小学校・中学校の理科の授業で習った方も多いかと思いますが、改めておさらいをしておきましょう。血液は細胞成分(血球や血小板)と液体成分(血漿)から成り立っていますが、その主な分類は以下のようなものです。

  • 血球成分……赤血球、白血球など。割合は赤血球が96%と圧倒的。
  • 血小板……血栓を作るのに必要なもの。凝集して傷口を塞ぐ
  • 血漿……血球成分や血小板を浮かせるための組織液

他にも各種イオン血漿タンパク質などの成分が存在するのですが、細かい部分はリンパを学ぶ上ではさほど重要ではありません。まずは血液における3種類の主要成分について押さえておけば良いでしょう。

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ここで大事なのは、血液の成分である組織液(主に血漿)です。組織液はやがて浸透圧を利用して血管から外に漏れ出てしまいますが、これがリンパと呼ばれる液体の素になります。

血管から染み出した血漿はリンパとなり、細胞から老廃物などを受け取ると、やがてリンパ管に集まり、最終的には静脈とつながって静脈血と合流し、また血液として心臓に戻ってきます。

血清とリンパの違い

リンパが血液から枝分かれするように生じることは先に挙げた通りです。では、リンパの成分は血漿と全く同じなのでしょうか?

実は、かなりの部分が似ているのです。
たとえば血液の場合は凝固するときに「血清」と呼ばれる透明な液体が分離するのですが、この血清とリンパの成分はかなり近いものであることが分かっています。

大きな違いとしては、リンパは血清と比べて総タンパク量が少ないこと、アルブミンというタンパク質の割合が増えていることでしょうか。アルブミンにはカルシウム・ビタミンなどの栄養素を細胞へ運び、代わりに細胞から不要物(老廃物)を回収するという特徴があります。

血清にはアルブミングロブリンと大きく分けて2種のタンパク質が含まれますが、どちらかといえばグロブリンの方が分子量が大きいのです。溶液は含まれる物質の分子量が大きいほどどろっとした粘性の高い液体になりますので、リンパは血清及び血液よりずっとさらさらした溶液として体の中を巡っていくことになります。

リンパの成分

リンパと血清の類似点と相違点についてはお分かりいただけたと思います。
今度はリンパそのものの成分について大事なことを学んでいきましょう。

血液が血球などの細胞成分と血漿などの液体成分によって構成されているように、リンパも細胞成分(主としてリンパ球)と液体成分(リンパ漿)によって構成されています。

リンパ球とは、血液内の白血球のうち、およそ20~40%ほどを占める比較的小さな白血球のことです。リンパ球は免疫機能を持っており、抗体を使って異物に攻撃を行ったり、ウイルスや腫瘍細胞に対応したりします。

リンパ漿はリンパ球以外の液体成分のことをさします。

リンパは各細胞組織から不必要な老廃物やたんぱく成分・病原体などを回収する役割を担っているので、リンパ液にもこれらの成分が含まれます。それ以外にも、血液の凝固を行うフィブリンを作る繊維素原もわずかながら含まれています。いかにリンパがさらさらな液体といえど、放っておくと凝固してしまうわけですね。

また、リンパは体中の様々な場所から老廃物を回収して来ますから、場所によって微妙に成分が異なります。その結果として見た目まで変わってしまうこともあります。たとえば小腸の腸絨毛の中心にあるリンパ管を流れるリンパは脂肪滴カイロミクロン)を含むので、色合いが乳白色になり、一般に乳び(にゅうび)と呼ばれています。

血液との違い

リンパは血液の成分や細胞内の老廃物などが染み出したもので、場所によって成分や色が微妙に異なることもある、という認識を得たところで、今度は血液との違いをもう少し細かく見ていきましょう。

リンパも血液も心臓を最終目的地とするところは同じですが、リンパは血液と違って体内をぐるぐる循環しているわけではありません。リンパは一方通行であり、このLessonの最初の方で述べた通り、最終的に太いリンパ管が静脈につながることで血液に流入します。

血液には心臓という「ポンプ」が存在しますが、リンパにはそんな都合の良いものはありませんし、一方通行ですので、リンパの循環に対しては「リンパ輸送」という言葉をあてることになります。血液循環との大きな相違点ですので、ここはきっちりと覚えておきましょう。

リンパの輸送は様々な外的要因に支えられています。

たとえば、体の位置や姿勢によってリンパ管周辺の筋組織が動けば、リンパ管壁の収縮が発生します。これがリンパの流れを生みます。他にも弁の開閉による振り子運動リンパ管自体の蠕動などによって、リンパは体内を移動していくのです。

リンパは心臓という強力なポンプを持たないので、リンパ管の自発的な収縮にのみ頼っていては、リンパはなかなか流れません。ずっと同じ姿勢でいたりするとリンパの流れが滞ってしまう、と言われているのはこれが原因です。

リンパの元となる血漿は液体成分ですから、水分不足により血液がどろっとして流れが悪化すると、リンパの流れまで悪くなってしまいます。手足の冷えや自律神経の不調も血液の循環を阻害する要因ですから、同じようにリンパを滞らせてしまいます。運動不足や冷えの放置、睡眠のリズムの悪化などを放置していると、リンパの流れというものはどんどん悪化していくわけですね。

そのままなにもしなければ、リンパは一箇所にせき止められたりして、栄養素や老廃物の移動がスムーズに行きません。したがって、リンパを流すためのマッサージ・指圧・セラピーなどが重要になってくるのです。