リンパの役割とは
血液とリンパの違いについて学んだところで、今度はリンパの役割を見ていきましょう。
基本的な役割はIntroductionでも説明した通りです。
- 体の隅々から老廃物を回収して回る
- 細菌を退治し、ウイルスなどへの抗体をつくる
これらについて、詳しく見ていきましょう。
体の隅々から老廃物を回収して回る
最初の役割については前回のLessonでも確認したとおり、アルブミンという物質の働きによるものです。ただ、この物質は老廃物の回収のみならず様々な働きを担っているので、少し詳しく解説していくことにしましょう。
アルブミンはアミノ酸をもとにして肝臓で合成されるたんぱく質です。
一日におよそ6~12gほど生成され、肝臓から血液に流入します。血液に入ったアルブミンは血流に乗って体中を巡ることになります。
まずアルブミンは血液中に運ばれてきたカルシウム、亜鉛、脂肪酸、酸素といった栄養素やホルモンなどの生理活性物質と結合し、毛細血管から外に出て、体中の細胞にこれらを運び込む役割を果たします。「栄養素の運送業者さん」と考えると良いでしょう。心臓(配送センター)から血管(道路)を通じて物質を運び、末端となる細胞の前で一旦血管から離れ細胞に必要な物質を渡します。
また、アルブミンは組織の水分を毛細血管に引き抜くことで体液の浸透圧を調整し、組織がむくんでしまうのを防ぐという役割も果たしています。この水分量調整により、わたしたちはむくみ、乾燥から逃れられているのですね。
もちろん回収するのは水分だけではありません。Lessonの本題である老廃物の回収もアルブミンの役割です。細胞に栄養を渡したアルブミンは、細胞から老廃物を回収してからリンパ管の中に入り、ここでリンパと合流します。
アルブミンは他にもph緩衝作用や抗酸化作用など、人体を保護するために必要な機能を有しています。身体の調子を整える有能な便利屋と考えてよいでしょう。しかし、それらの作用を有効に使えるのも、血管とリンパ管という2つの循環系があってのことです。
もし体の中を流れている循環系が血管のみだとしたら、アルブミンが各細胞に栄養を渡すだけとなり、細胞内の老廃物が排出されずに溜まってしまうことになっていたのかもしれません。そう考えると、リンパは下水道のようなものと言えるかもしれません。
細菌を退治し、ウイルスなどへの抗体をつくる
次に免疫系の役割ですが、これはリンパ球の働きによるものです。リンパの中にはリンパ球以外にもごくわずかに白血球がありますが、割合としてはかなり少ないため、主としてリンパ球が免疫系の役割を担っています。
リンパ球の素となる白血球は、先のLessonでも確認したとおり、血液に含まれる細胞成分の1つです。その種類は顆粒球、リンパ球、単球に分かれており、顆粒球は好中球、好酸球、好塩基球の3種類に分類されます。
主な割合として好中球は50~70%を占め、ついでリンパ球が20~40%、それ以外の白血球はほんの数%ほどとなっています。ただし好中球はリンパ球より大きいため、リンパの中には入りません。リンパ液の中には好中球はほとんど含まれていないことに注意してください。
白血球は外敵から体を守るために働くのですが、それぞれの働き方はだいぶ異なります。
好中球
たとえば好中球は、感染した炎症部位に集まり細菌を飲み込んだ上で殺菌を行います(貪食殺菌)。ただしその免疫能力は比較的弱めで、もし好中球で対処できない異物が侵入した場合はより強い免疫能力を持つリンパ球などの出番となります。
好中球はあくまで免疫系の尖兵、偵察役のようなものだと考えましょう。
リンパ球
リンパの細胞成分における主成分ともいえるリンパ球は、白血球の中では小さい部類に入ります。10μmに満たない比較的小さな小リンパ球と9~15μmほどの大リンパ球とに分かれますが、厳密に大きさで区別しているわけではありません。
NK細胞、B細胞(Bリンパ球)、T細胞などの種類があり、様々な異物を攻撃対象とします。免疫グロブリンなどの抗体を作ったり、抗体産生を誘導したりする役割を持っているため、このリンパ球は人間の対ウイルス生存戦略に欠かせない存在となっています。
元々は骨髄で産生されるものですが、その後も胸腺など他の器官で成熟し、さらにリンパ節で成熟したり数を増やしたりするという複雑な経緯を辿ります。寿命も長く、中には年単位で生きのびるリンパ球も存在するほどです。
単球
単球は白血球細胞の中で最も大きいもので、細菌などの異物を自身の内側に取り込み、細胞内の酵素を利用して消化します。
好酸球、好塩基球
好酸球、好塩基球はアレルギー反応を引き起こしたり抑制したりする働きを持っています。
このように様々な種類のある白血球ですが、リンパに含まれるのはほとんどがリンパ球です。
ウイルスに対する抵抗力について考えてみると、リンパがとても重要な役割を果たしていることがよく分かりますね。リンパ節ではこうしたウイルスや殺菌を漉しとって全身にめぐらさないようにした上で、細菌などを処理しているため、風邪など具合の悪いときに腫れてしまうのです。