Lesson1-3 リンパと癌の関係

リンパといえば癌?

リンパといえば癌、とまでは言いませんが、リンパは癌と一緒くたにして語られがちです。その理由は簡単で実は18世紀頃から、「癌はリンパ流に乗って広がる」という事実が認識されていたからです。

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18世紀の発見以降も研究は進みましたが、やはり癌とリンパには深い関係があるということが明らかになるばかりで、もはや切っても切り離せない関係であることは常識になっています。このLessonでは癌とリンパの関係を今一度学びなおして見ましょう。

そもそも癌とは何なのか

まず、癌についておさらいしましょう。

癌について考えるためには、まず腫瘍について知らなければなりません。腫瘍とは、遺伝子変異によって自立的に制御されなくなった細胞集団のことです。一般的にはできものなどと呼ばれたりしますがこれを性質の違いによって「良性」「悪性」の2つに分類します。

良性腫瘍

良性腫瘍とは、異常に増え続ける細胞集団のうち、細胞がふくらむように大きくなっていくものをさします。つまり数を増やすような形で増殖するものではないのです。体にはあまり悪い影響をもたらしませんが、だからといってけっして良いものでもありません。

代表的な良性腫瘍は「子宮筋腫」や「おでき」です。脂肪細胞が異常増殖する「脂肪腫」(いわゆる「こぶ」と呼ばれるものです)もまたこの一種ですが、あまり周りに転移することもなく、細胞の増殖スピードも比較的ゆっくりであるため、大事に至る可能性は低くなります。また、良性腫瘍は切除できるものも多く、一旦切り離せば再発の可能性は大いに下がります。

悪性腫瘍

一方、悪性腫瘍は良性腫瘍と違って猛スピードで増殖し、周囲の組織に浸潤していきます。また、切除しても再発する可能性が高いこと、転移を起こす可能性があること、そしてなにより命を脅かすことから非常に脅威度の高いものです。

他の細胞に行き渡るはずの栄養や酸素が悪性腫瘍に取られてしまうため、いったんこれが発生すると体の様々な場所に不調が生じます。主な発生箇所は胃腸、肝臓、肺、子宮、乳腺などですが、骨や筋肉もけっして安全ではありません。

一般的に、この悪性腫瘍のことを癌、あるいは悪性新生物などと呼びます。癌は腫瘍の一種なのですね。

癌の転移

癌の転移の仕方は3つに大別できます。1つは癌細胞が周囲を浸潤していく形式で、これを「組織局所浸潤転移」や「播種性転移」と呼びます。

他の2つは血管やリンパ管を通して転移を行うものです。腫瘍組織の周囲・腫瘍内部の血管を経由するのは「血行性転移」と呼び、リンパ管に侵入してリンパ節に転移するのを「リンパ行性転移」と呼びます。臨床の場では癌細胞がリンパ節を経由することから「リンパ節転移」と呼ぶ方が一般的です。

リンパ節転移は、まず第一段階として、組織内の癌細胞が周囲のリンパ管に侵入します。この侵入に関しては詳細なメカニズムが明らかになっているわけではありませんが、リンパが老廃物を回収する役割を担っているせいなのか、癌細胞もリンパ管内に浸潤してしまいやすいのです。

リンパ管に入った癌細胞は体のどこかへ転移を始めます。血管でも同じようなことは起こりますが、一度リンパの流れに乗った癌がどこに転移するかを把握するのは大変難しいのです。それゆえ、たとえ大元を切除したとしても、他の場所で再発するケースがあるのです。

傾向としては大きな動脈リンパ管に近い臓器に転移する可能性が高くなります。たとえばすい臓癌はこの手の転移によって発生しがちです。

悪性リンパ腫

ちなみに血液の癌の一種としてリンパ系組織から発生するものもあります。これを悪性リンパ腫と呼ぶのですが、言うなればリンパ系に特有の癌というわけですね。

発症年齢のピークは65~74歳と言われていますが、若い内からかかる例もないわけではありません。日本でも罹患者の数は年々増加傾向にあり、人口10万人につき男性が22.1%、女性が16.8%と、年を取れば高確率で発症するものと見られます。しかも厄介なことに、この悪性リンパ腫は何が原因で発症するのかいまだに判然としていません。

他の癌と異なる点として、リンパ腫による腫れやしこりでは痛みや熱を伴わないことが多いようです。そのため自覚症状のない方も大勢いますが、知らぬまま放置していると、他の癌同様大変なことになってしまいます。癌に変異したリンパ球はリンパの流れに乗って全身を巡るため、体全体で倦怠感を覚えたり、寝汗やかゆみなどの全身症状が発症することもあります。

リンパに注意すれば癌の早期発見は可能?

リンパは循環系ゆえ、血管と同じように癌を様々な場所へ運んでしまう宿命を帯びています。そのうえ、リンパ自身もまた癌そのものになってしまう危険性を帯びているのです。しかし、癌と同じように発見が早ければ早いほど治療の効果は高くなりますので、普段からリンパを意識して生活すれば癌予防にもなるでしょう。

リンパ&セラピーは直接的に癌検診を行うものではありませんが、施術中に奇妙なしこりや腫れを発見できる場合があります。死に至る病の早期発見はリンパ&セラピーを勉強する副産物と捉えましょう。