Lesson2-1 循環系に関する基礎知識

リンパは体中を巡る循環系

リンパは体中を巡っています。この流れが悪化すると、

  • 老廃物の回収などが上手く行かない
  • 部分的にむくみや腫れが発生する

などの諸症状が現れることは、今までの説明でご理解いただけたと思います。つまりこれを逆に考えると、「リンパが滞らないように流してあげれば健康体に近づく」という理屈になります。

しかし、リンパを流すと言っても、「どの方向に」流せばいいのか、そしてなぜその方向に流せば症状が改善されるのかが分からなければ、治療法として具体性を備えているとは言いがたいです。もしリンパを逆方向に流してしまえばどうなるのか? やはり細胞に受け取ったはずの老廃物を戻してしまうことになるのでしょうか? 答えを出すのは簡単ではありません。

そこで、今度はいったんリンパから離れて、リンパ&セラピーの前提となるものについて学んでいきましょう。そう、体中を巡る循環系のお話です。

循環系とはなにか

循環系の前に、まず器官系の話をしましょう。中学生くらいの理科の授業で学ぶ内容ですが、忘れている方も多いでしょうし、まずは細胞→組織→器官の流れについておさらいしましょう。

動物の細胞がある特定のパターンに則って集合すると、組織が形成されます。すると今度は一つのまとまった役割を持つ組織が集まって、胃や心臓などの臓器(器官)を形成します。器官系とは器官を役割に基づいてまとめたものを指します。

動物には様々な器官系が存在します。
たとえば、食物の消化吸収を行う消化系、ガスの交換を行う呼吸系、刺激の伝達と調節を行う神経系など、名前を聞いたことのあるものも多いでしょう。普段お医者さんに行ったときによく耳にする分類でもありますね。

循環系は動物における器官系の一種で、血液の通り道である血管、リンパの通るリンパ管、血液を送り出すポンプの働きをする心臓などをまとめたものです。循環系は血液とリンパの循環を担当しており、それぞれ「血管系」「リンパ系」と呼ばれています。

血管系

心臓、動脈、静脈、毛細血管から構成されています。

心臓

ご存知の通り血液を体中に送り出す器官です。不随意筋で形成されるこの器官は、寝ている間も止まることなく血液を送り出し続け、体中から戻ってきた血液を受け取っています。その役割ゆえに、心臓は血液循環系の中枢器官と呼ばれています。

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血管

血管は動脈、静脈、そして毛細血管の3種類からなります。これが血液を身体の各部位に送り、栄養素や酸素を送ったりしているのです。

信じがたいことですが、人間の血管の長さは全てを合わせるとおよそ10万キロメートルにも及びます。これは赤道に沿って地球を2周半できるほどの長さです。わたしたちの血管が、とても細い状態で体の細部に至るまで、折りたためるように張り巡らされているのが良く分かりますね。

動脈

動脈は心臓から押し出される血液を流すための管であり、その中には動脈血が流れています。動脈血の特徴は酸素に富んでいることで、これが全身を巡って細胞に酸素を渡す役割を果たします。

ただし、注意して欲しいことが一つだけあります。
動脈血は「酸素を多く含む血なのであって、必ずしも動脈にだけ流れているわけではありません。肺にめぐった血液が酸素を交換し、肺静脈を通って心臓の左心房へ流れ込んできますが、この肺静脈を流れる血も酸素の多い動脈血です。

静脈

静脈は全身に酸素を運んだ後の、二酸化炭素が多く含まれる静脈血を運ぶ血管です。静脈は全身から心臓へ帰ってくる道ですので、心臓の拍動の影響をあまり受けず、静脈血はゆっくりと流れてくることになります。私たちは脈拍を測るときによく手首の動脈の筋に指を置いて確かめたりしますが、これは静脈の上に指を置いても脈拍は測れないということを知っているからですね。

Capillary_system_CERT

出典:wikipedia「Artery」が動脈、「Vein」が静脈、この間に挟まっている「Capillary」が毛細血管です。正確には更に、動脈と毛細血管の間に細動脈が、毛細血管と静脈の間に細静脈が、それぞれ挟まっている。

血液の循環経路

心臓を中心とする血液の循環は、

左心室→動脈→全身→静脈→右心房→右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心房

このような流れであることを覚えておきましょう。

リンパ系

リンパ系という言葉はリンパを流すネットワークのことを指し、血管系よりもう少し広い範囲に適用されることも多く見られます。リンパ節、リンパ管のみならず、脾臓や骨髄などのリンパ組織なども含まれています。

ちなみにこれらを初めてリンパ系と称したのは、オランダのオラウス・ルドベックとデンマークのトーマス・バートリンだと言われていますが、先に発見したのがどちらであるかは定かではありません。

リンパ系と血管系の大きな違いは、まずLesson1-1で学んだとおり、リンパ系に心臓のようなポンプの役割を果たすものがないことでしょう。

  • リンパ管周辺の筋組織の動き
  • 弁の開閉による振り子運動
  • リンパ管自体の自発的な収縮

これらの要因により、はじめてリンパは体内を巡ることになります。

リンパ管は細胞から老廃物受け取る役割を担っているため、血管に寄り添うように存在します。血液が細胞に酸素と栄養を渡し、二酸化炭素を受け取る働きが行われる際にリンパも追従し、老廃物を受け取って、ゆっくりとリンパ節へ向かってリンパ管内を移動しています。

リンパ系の主な器官については、次のLessonで詳細を確認していきましょう。