Lesson2-3 リンパ管の構造や配置

リンパ管について

リンパ管という言葉は今までのLessonでも何度か出てきましたが、血を流す管を血管と呼ぶように、リンパを流す管をリンパ管と呼ぶ、といった簡単な説明で想像していただいたと思います。

このLessonでは、各リンパ組織をつなぐリンパ管について、その構造から配置に至るまでしっかりと学んでいきます。

リンパ管の種類と構造

リンパ管には毛細リンパ管、集合リンパ管、そして最も太いリンパ本幹があることは前回のLessonにて学習いたしました。

基本的な構造に関しては、集合リンパ管は毛細リンパ管よりやや太く、リンパ管の壁となる平滑筋が存在します。集合リンパ管はこの平滑筋によって、毛細リンパ管よりも蠕動(ぜんどう)によるリンパ輸送に向いた経路となっています。

これをもう少し詳しく見ていきましょう。
リンパ管には毛細リンパ管から集合リンパ管まで様々な太さのものがありますが、細いものほど単純な構造になっています。たとえば毛細リンパ管には平滑筋の層と外側の外膜がありません。ただ1層の内皮細胞で覆われるだけになっています。その代わり、管の外側に多数の細繊維係留フィラメント)がついており、これが周囲の組織と結合して内皮細胞同士を固定する役割を担っています。

この部分は分かりにくいので、仕組を解説しましょう。

まず、体の各組織の間隙には水分や電解質、たんぱく質など様々なものが溜まっています。これを組織液間隙液)といい、これらが毛細リンパ管に吸収されてリンパとなります。

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出典:wikipedia 組織液からのリンパ液生成。盲管(内臓器官で、一方の端が閉じている管を指す)となっている毛細リンパ管にどうやって組織液が入っていくかを表した図。

 

毛細リンパ管が組織液を吸収する方法には様々な説があり、かつては組織内の浸透圧の違いにより組織液が毛細リンパ管に吸収されるものだと考えられてきましたが、最近ではまた別の考え方が提唱されるようになりました。

組織間隙に液体が溜まると、圧力が上昇して細繊維(係留フィラメント)が引っ張られます(鉄棒を掴んだままの姿勢で、鉄棒の高さだけが上昇していくのをイメージしてみて下さい)。そうなると内皮細胞同士の結合が緩み、わずかに隙間が生まれます。組織液はその隙間から毛細リンパ管の中に入っていきます。こうして毛細リンパ管はリンパを吸収し、より太いリンパ管へ向けてリンパを流していくことになります。

リンパ管が太くなると、今度は内皮細胞で覆われた内膜だけではなく、その外側に膜が追加されていきます。まずリンパ管の太さが40μmを越えると、内皮細胞にくわえて繊維性の外膜を持つ構造に変化します。そして太さ100μmを越えて集合リンパ管クラスのものになると、先ほど挙げた平滑筋からなる筋肉の膜、いわゆる中膜(平滑筋層)が内皮細胞と外膜の間に形成されるようになります。

毛細リンパ管と集合リンパ管は外側の構造以外にも大きな違いがあります。
一般的に毛細リンパ管には逆流を防ぐための弁が存在しません。しかし集合リンパ管ともなると事情が異なり、1~5mmほどの間隔で弁(二尖弁)が存在しています。集合リンパ管の弁と弁の間はリンパ管分節リンファンギオン)と名づけられています。

リンパ管の役割とリンパの経路

体の細部に散らばる毛細リンパ管とリンパを収集する集合リンパ管では、その構造も明確に異なりますので、必然的に果たすべき役割も異なってきます。

毛細リンパ管は全身の末梢組織に網の目のように広がり、動脈血から漏れた組織液を吸収し、リンパとします。このタイミングで細胞の老廃物や外から侵入した異物などを取り込んでいるわけですね。

そうして取り込んだリンパは前集合リンパ管、集合リンパ管、リンパ主幹部(胸管など)を通り、最終的には血管系である静脈に注がれることになります。

リンパの流れとしては、

末梢組織→毛細リンパ管→前集合リンパ管→集合リンパ管→リンパ主幹部→静脈

となります。この流れをしっかり押さえておきましょう。
ただし注意点がいくつかありますので、取りこぼさないように確認しておきましょう。

  • リンパ管の途中にはリンパ節があり、関所のような役割を果たしている。
  • リンパはバイパスを通じて他の部位へ流れることもある。
  • リンパ管が閉塞することでリンパが逆流することもある。
  • 血液と違って、本来の流れとは反対側に流れてしまうこともある。

リンパ管の配置

リンパ管の流れが分かったところで、今度は配置について学んでいきましょう。

リンパ管には体の表面に近い浅い部分を流れる表在リンパ管(浅リンパ管)と体の深層部分を流れる深在リンパ管(深リンパ管)の2種類があり、それぞれの管におけるリンパの流れ方はおおよそ決まっています。

Lymphatic_system

出典:wikipedia 点在している小さな黒点がリンパ節を指します。

表在リンパ管

表在リンパ管はいくつかのリンパ節を通って深在リンパ管へ入ります。

代表的なリンパ節は鼠径部(そけいぶ)腋窩部(えきかぶ)にあるものですが、周囲のリンパ管はまずここを目指すわけですね。たとえば肩や上腕のリンパは腋の下にある腋窩リンパ節に向かって流れていますし、お腹や太もものリンパ管は太ももの付け根にある鼠径部リンパ節を目指します。

毛細リンパ管→集合リンパ管→代表的なリンパ節

の流れになります。なお、このリンパ節は首のところにある頚部リンパ節、腋の下の腋窩リンパ節、太ももの付け根にある鼠径部リンパ節の3種類となります。

したがって、表在リンパ管をケアしてリンパを流す場合、これらのリンパ節にリンパを流すよう指圧すれば効果的であることが分かりますね。

深在リンパ管

深在リンパ管は身体の奥深くにあるリンパ管のことで、表在リンパ管で集められたリンパがここに流れ込んできます。そうして深在リンパ管に集められたリンパは静脈角を通して静脈に合流することとなります。その特徴としては以下のものが挙げられるでしょう。

  • 背骨に沿うように太いリンパ管がある(胸管)
  • 身体の右上半身のリンパは全て右リンパ本管を経由する
  • 鼠径部リンパ節に集まった下半身のリンパが徐々に集結しながら身体の深部へ向かう

下半身のリンパは鼠頚部リンパ節から骨盤、お腹の中を通り乳び槽へ到着します。その後は胸管を通って静脈に合流します。また右リンパ本管へ集められたリンパも胸管を通るリンパと同じように静脈と合流します。

合流地点はちょうど鎖骨の下のあたりで、ここに鎖骨下静脈と内頸静脈の合流する静脈角と呼ばれる部位があるのです。これが左右にそれぞれ1つずつ存在し、胸管のリンパは左静脈角で、右リンパ本管のリンパは右静脈角でそれぞれ静脈に合流することになります。

今回説明した全体のリンパ管の配置、そして表と裏のリンパ管については難しい部分ですので、しっかり読み込んで頭に入れましょう。