Lesson5-3 リンパ&セラピーの基本

リンパの流し方

体内で滞るリンパを流すためにはいくつものやり方がありますが、基本的な考え方は2つです。

身体をさすることによってリンパを流す

身体をさするだけでもリンパは流れます。そもそもリンパというものは正常な状態であればきちんと流れてゆくものですので、なにもしなくとも本来は勝手に流れていくのです。さするのはその補助的な行為だと考えればよいでしょう。

リンパが滞るといっても、慢性的なものばかりではありません。ちょっと生活リズムが崩れるだけでも流れが悪くなることはあります。仕事場で同じ姿勢のまま何時間も作業を続けるのも、リンパのみならず血行不良を引き起こす原因となります。

そんなときに気軽に出来るマッサージとして、リンパ節の周辺を正しい方向にさすることで適切にリンパを流す。これもリンパ&セラピーの基本中の基本です。

チューブから絞り出すように圧力をかけてリンパを流す

たとえば、水の流れが悪くなったパイプがあると想像してみましょう。

配管のつまりを直すためには汚れを取り除かなければなりませんが、その方法には様々なものがあります。つまりの原因となる物質を手で直接取り除いてもよいですし、流れる水の圧力を高めてつまりの原因を押し流してしまうという手もあります。

リンパに関しても同じことが言えます。実際の配管でしたら、つまりの原因によっては水の圧力で流すわけにはいかないということもあるでしょうが、リンパ液の中には押し流して困るようなものはありません。むしろリンパ節経由で速やかに体外に排出すべきものばかりです。

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ですから、チューブから絵の具を絞り出すように、ぐっと末端から指圧して流してしまって大丈夫なわけですね。その場合はリンパが逆流してしまわないように、押し流すべき方向へゆっくりと指や手のひらを滑らせていくというやり方になります。

末端からリンパ節に向けて流す

血液は身体の細部へ栄養と酸素を渡して、リンパが老廃物を受け取り輸送します。流れとしては以前のLessonで説明したとおり、表在リンパ管や表在リンパ節を経由して深在リンパ節・深在リンパ管へ流れ、最終的には胸管やリンパ本管を通じて静脈に合流します。

ゆえにリンパもこれに沿うようにして流れていくのですが、逆に流してしまったら細胞の方へ老廃物を移動させてしまうことになります。もちろん、太いリンパ管には弁がありますし、リンパ管から細胞への経路はそもそも存在しませんので、細胞に老廃物がたまるわけではないのですが、細胞と細胞の間を埋める組織液には老廃物が戻ってしまうかもしれません。リンパを逆方向に流す意味はないと心得ましょう。

効果的なリンパ&セラピーを行いたい場合は、ちゃんと末端(手・足・頭など)から主要なリンパ節へ向かってリンパを流す、ということを意識しましょう。

セラピーの力加減

マッサージのコツとしてよく聞くのが、最初から最後まで同じ力で揉みほぐすというものです。痛みが消えてきたらちゃんと手技療法が効果を発揮してきたということですね。

何度か言及してきましたが、リンパ&セラピーのコツは力を入れ過ぎないことです。痛みを我慢するほどの強さで押してしまうと、筋肉や神経を傷つけてしまう恐れがあります。筋繊維への損傷から痛みが出てしまうことをもみ返しと言いますが、筋肉痛と同じようなもので、良い方向へ向かう場合もあれば悪化してしまうこともあります。

良いもみ返しと悪いもみ返しの判断は難しく、区別するのはナンセンスであるという人もいます。いずれにせよ、本来ならリンパを流すのが目的のリンパ&セラピーで、筋肉や神経を傷つけてしまうのは喜ばしいことではありません。

力加減の調整は難しく、同じ力でも筋繊維が傷つく人、傷つかない人がいます。実際に揉んでみたときに痛いと感じられるようでしたら、なるべくソフトな方向へ力加減を調整するのが良いでしょう。

リンパ&セラピーの基本的な手技

押圧(おうあつ)

これは呼んで字のごとく、患部を押して圧力をかけることです。指圧ですと指だけを使うことになりますが、リンパ&セラピーの場合は手全体を使う場合も多いので「押圧」が使われています。そもそも西洋式のマッサージは手全体を使って静脈やリンパの還流を改善するものですから、ツボや特定の部位に狙いを定める指圧より、広い範囲をカバーできる押圧の方が効果的なことも多いのです。

軽擦(けいさつ)

呼んで字のごとく、患部を手のひらや指先で軽くこすりつけるのを軽擦と呼びます。赤く腫れ上がるまで行う必要はありませんので、患部があったまる程度にとどめましょう。皮膚の表面を揺らすのはリンパを流す上でもとても重要なことです。

筋肉ほぐし

リンパと筋肉の関係は浅いようで深いものです。リンパは本来ちょっとした刺激でも流れるものですから、柔らかい筋肉の動きがリンパの流れを促すこともままあります。したがって、こり固まった筋肉をほぐすことでリンパの流れを改善するという考え方もあります。

また、血液の循環が悪くなってしまうと、血液→細胞→リンパという流れにも影響が出てしまいます。したがって、手で様々な形を作って筋肉をほぐすのは効果的な方法足りえます。三本の指で撫でるように、あるいは熊手のような形で手を身体に食い込ませて揺すり、筋肉をほぐしてあげましょう。

他にも流派によっては細かいやり方の指導が入ることになるかと思いますが、基本的な動きは「押して」「さすって」「ほぐす」ことです。これらがきちんと適切な力で行えるようになれば、リンパ&セラピーも上手く行くでしょう。